私はこれまで、UI/UXデザイナーの採用面接を数多く担当してきました。
その中で、作品の見た目以上に大切にしていたことがあります。
それは、
「なぜ、そのデザインになったのか」
を自分の言葉で説明できるかどうかです。
面接は、作品の品評会ではない
デザインの面接というと、ポートフォリオに完成度の高い作品を並べ、「こんなものを作りました」とアピールする場だと思われるかもしれません。
もちろん、それも大切です。
ただ、UI/UXデザインは、作って終わりではありません。
ユーザーや事業、技術の変化に合わせて、改善を続けていくものです。
だから私は、完成した画面そのものよりも、
なぜそうしたのか。何を解決しようとしたのか。
を聞きたいと思っています。
「ユーザーのために」から、もう一歩先へ
たとえば、
「このボタンを、この大きさにした理由は何ですか?」
と質問したとします。
「ユーザーが押しやすいようにしました」
という回答は、決して間違いではありません。
でも、もう一歩知りたい。
なぜ、その大きさなら押しやすいと判断したのでしょうか。
- ユーザーテストの結果かもしれません。
ヒアリングかもしれません。
アクセス解析かもしれません。
あるいは、Material Design guidelineの48px×48pxや、apple human interface guidelinesの44×44pxを参考にしたのかもしれません。
大切なのは、数字を暗記することではありません。
「私はそう思った」ではなく、判断のよりどころを持つこと。
これが、「虹色のタコになれ」で繰り返し書いてきた、目的と根拠で考えるということです。
デザイン案が通らなかったとき
面接では、前職について聞くこともあります。
「自分のデザイン案が通らなかった」という経験もあるでしょう。
でも、良いデザイン案であっても、事業の優先順位や予算、技術、ブランド、組織の事情で採用されないことはあります。
だから私が聞きたいのは、
「会社がデザインを理解してくれなかった」
という話ではなく、
なぜ通らなかったと考え、そこから何を学び、次にどうしたのか。
です。
デザインは、一人で正解を決める仕事ではありません。
自分とは違う意見を聞き、必要なら考え方や形を変える。
ここにも、「虹色のタコ」であることの意味があると思っています。
デザイナーには「聞く力」が必要
デザイナーには、コミュニケーション能力が必要です。
ただし、話し上手である必要はありません。
私はむしろ、聞き上手であることのほうが大切だと思っています。
- 誰が使うのか。
- 何に困っているのか。
- 事業として何を実現したいのか。
- 何をもって成功とするのか。
それを聞き、整理し、デザインに変換する。
そして、
「こう聞いたので、こう考え、こう設計しました」
と説明する。
きちんとプロセスを踏んでいれば、特別なプレゼン能力がなくても、自分のデザインは自然と説明できるはずです。
ポートフォリオにも「なぜ」を残す
だから、ポートフォリオも完成画面だけを並べるのではなく、
- どんな課題があったのか
- どんな方針で設計したのか
- 自分は何を担当したのか
- なぜこのデザインにしたのか
- 結果、何が変わったのか
を簡潔に残しておくと、その人の考え方が伝わります。
これは面接対策のためだけではありません。
自分自身が「なんとなくデザインしていなかったか」を振り返るためにも役立ちます。
8本の足を動かすのは「頭」
「虹色のタコになれ」では、デザインに必要な知識を8本の足に例えてきました。
色彩、構成、視覚生理、タイポグラフィ、情報設計、インタラクション、アクセシビリティ、ガイドライン/改善。
どれも大切です。
でも、それを何のために使うのかを決めるのは「頭」です。
- 誰に、何を届けたいのか。
- 何を解決したいのか。
- どうなれば成功なのか。
ここが整理されていなければ、8本の足をどれだけ器用に動かしても、進む方向は定まりません。
面接は試験ではない
最後に、私はデザイナーの面接を「合格・不合格を決める試験」だとは考えていません。
会社とデザイナーが、一緒に働けそうかを確かめる場です。
それは、面接を受ける側から見ても同じです。
すべての会社に合わせる必要はありません。
ただ、自分のデザインについて、
「なぜ、こうしたのか」
を話せるようにしておく。
それだけでも、面接で伝わるものは大きく変わります。
そしてこれは、面接のためだけではなく、デザイナーとして仕事を続けていくうえで、とても大切な習慣なのだと思っています。


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