前回の記事では、「信頼」について書きました。
信頼できる人には、いくつか共通するものがあります。
- 約束を守ること。
- 誠実であること。
- 相手によって態度を変えないこと。
そして、もうひとつ。
私は、信頼できる人には、
「自分が何をもらえるか」よりも、「自分から何を与えられるか」を考えている人が多い
ように感じています。
今回は、この「与える」ということについて、少し深く考えてみたいと思います。
そして今回は、「虹色のタコ」に新しい友だちが登場します。
芯のイカです。
虹色のタコが、
「やってみよう!」
と前に進む存在なら、芯のイカは、ときどき立ち止まってこう聞きます。
「で、何のため?」
今回は少しだけ、深いところまで潜ってみましょう。
欲しがるだけでは、何も生まれない
仕事をしていても、人と付き合っていても、
- 「もっと評価してほしい」
- 「もっと教えてほしい」
- 「もっと仕事がほしい」
- 「もっと理解してほしい」
と思うことがあります。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
誰だって認められたいし、必要とされたい。
私もそうです。
でも、
「自分は何をもらえるのか」
ばかりを考えていると、どこかで行き詰まってしまうように思います。
なぜなら、欲しがるだけでは、新しい価値は生まれないからです。
もらう前に、自分から何をつくれるか
たとえば仕事なら、わかりやすいかもしれません。
「良い仕事をください」と待つ人と、
「この問題なら、自分はこう解決できます」
と提案する人。
「もっと評価してください」と求める人と、
「チームが前に進むために、自分に何ができるだろう」
と考える人。
後者のほうが、結果として仕事や信頼が集まりやすくなります。
それは単に「良い人だから」ではありません。
自分から価値を生み出しているからです。
- 知識でもいい。
- 経験でもいい。
- アイデアでもいい。
- 困っている人に声をかけることでもいい。
誰かの話を丁寧に聞くことだって、ひとつの価値です。
大きなことでなくてもいい。
自分から何かを差し出す。
そこから、人との関係が始まります。
「自分には、まだ与えられるものがない」と思う人へ
ここまで読むと、
「でも、新卒の自分には、まだ人に与えられるほどの知識も経験もない」
と思う人もいるかもしれません。
でも私は、そうではないと思っています。
素直に受け取ることも、与えることにつながる
たとえば、先輩や上司からアドバイスをもらったとします。
それを素直に受け止める。
自分なりに考える。
そして、一生懸命アウトプットしてみる。
これも、立派な「与える」だと思います。
なぜなら、教えてくれた相手に対して、
「あなたから受け取ったものを、私はこう活かしました」
と返しているからです。
これは、新卒だけの話ではありません。
中途採用でも、ベテランでも同じです。
新しい会社、新しいチーム、新しい仕事に入れば、知らないことは必ずあります。
そこで、
「自分は経験者だから」
と構えるのではなく、
まず話を聞く。
素直に受け止める。
考える。
そして、自分の仕事として返していく。
その姿勢自体が、周囲への価値になります。
もらったものを大切に受け取り、自分なりに咀嚼し、行動や成果として返す。
それも、立派な価値の循環です。
人に与えないものは、人からも返ってきにくい
少し強い言い方になりますが、私はこう思っています。
人に何も与えなければ、やがて人から何かを受け取る機会も減っていく。
これは、罰の話ではありません。
もっと単純な話です。
人と人との関係には、循環があります。
自分が誰かを助ける。
その人が、また別の誰かを助ける。
情報を共有する。
いつか誰かが、自分に情報を教えてくれる。
人を紹介する。
そして、別の誰かが自分を紹介してくれる。
もちろん、与えた相手からそのまま返ってくるとは限りません。
むしろ、それを期待して与える必要もありません。
それでも、自分から価値を外へ出している人の周りには、少しずつ価値が循環していくように思います。
欲しがるばかりだと、自分では何も生み出せなくなる
もう少し踏み込んでみます。
欲しがることばかりに慣れてしまうと、
「誰かが何かをしてくれないと、自分は前に進めない」
という状態になってしまいます。
- 仕事を与えてもらわないと動けない。
- 答えを教えてもらわないと考えない。
- 褒めてもらわないと自信が持てない。
- 環境を整えてもらわないと始められない。
そうなると、どれだけ多くのものを持っていたとしても、自分から新しいものを生み出すことが難しくなります。
だから私は、
欲しがるばかりの人は、結果として「何も持っていない」のと似た状態になってしまうことがある
と思っています。
本当に大切なのは、
何を持っているかではなく、持っているものから何を生み出せるか。
なのかもしれません。
でも、「与える」とは自己犠牲ではない
ここで、芯のイカが聞いてきます。
「で、何のために与えるの?」
これは、とても大事な問いです。
与えることは、
- 何でも引き受けること
- 自分を犠牲にすること
- 嫌われたくなくて相手に合わせること
- 見返りを期待して親切にすること
ではありません。
私は、
「自分にできることを、自分の意思で差し出すこと」
が、与えるということなのだと思います。
だから、断ることだってあります。
できないことは、「できない」と言っていい。
相手のためにならないことなら、あえて手を貸さないという判断もあります。
与えることにも、芯が必要です。
相手が本当に必要としているものは何か
これは、デザインにもよく似ています。
デザイナーが、
「自分の好きなものをつくってあげました」
では意味がありません。
大切なのは、
- 誰のためなのか
- 何に困っているのか
- 何を解決したいのか
- どうなれば、その人にとって良いのか
を考えることです。
たくさん装飾を加えることが、「与える」こととは限りません。
機能をたくさん増やすことも同じです。
ときには、余計なものを取り除いたほうが、その人のためになる。
だからデザインも、
「何を与えるか」より、「相手に何が必要か」
から考える必要があります。
信頼は、小さな「与える」の積み重ね
信頼は、
「信頼してください」
と言って得られるものではありません。
日々の小さな行動の積み重ねです。
- 困っている人がいたら、できる範囲で手を貸す。
- 知っていることがあれば共有する。
- 誰かの成果を一緒に喜ぶ。
- 相手の話をちゃんと聞く。
- アドバイスをもらったら、行動で返す。
- 約束したことを守る。
そんな小さな「与える」が積み重なって、
「この人なら大丈夫」
という信頼になっていくのだと思います。
そして、その信頼があるからこそ、今度はこちらが困ったときに、誰かが手を差し伸べてくれる。
これが、価値の循環です。
欲しがる前に、「自分に何ができるだろう」と考えてみる
仕事がほしいとき。
評価されたいとき。
誰かに必要とされたいとき。
つい、
「自分は何をもらえるだろう」
と考えてしまいます。
でも、そんなときほど少し視点を変えて、
「自分から何を与えられるだろう」
と考えてみる。
- 待つのではなく、つくる。
- 要求するのではなく、提案する。
- 欲しがるのではなく、生み出す。
そして、まだ経験が少ないなら、
もらったものを一生懸命受け取り、
自分なりのアウトプットとして返す。
それでも十分です。
その積み重ねが、やがて人や仕事や信頼につながっていくのではないでしょうか。
芯のイカから、ひとこと
虹色のタコなら、きっとこう言います。
「できることから、やってみよう!」
そして芯のイカは、少し考えてからこう言います。
「うん。でも、誰のために、何を与えるのかは考えようね。」
変わることも大切。
動くことも大切。
でも、その真ん中には、自分なりの芯が必要です。
何かを得たいときほど、まず自分から何を生み出せるか。
そして、誰かから何かを受け取ったなら、
自分なりの形にして、また誰かに返していく。
そんな循環をつくれる人でありたい。
私も、そう思っています。



コメント