「デザインとアートは何が違うのか」
デザインの仕事をしていると、ときどき聞かれる質問です。
見た目だけでは境界が分かりにくいものもありますし、私はこの二つを完全に分けられるとは思っていません。
それでも、20年以上デザインに関わってきて、大きな違いがあると考えています。
それは、
「何を起点に考えるのか」
です。
アートとデザインは、どこから始まるのか
すべてに当てはまる話ではありませんが、私が仕事で扱ってきたデザインについて考えるなら、
アートが「何を表現したいか」から始まるとすれば、デザインは「誰に、何を届けたいか」から始まる。
そんなふうに考えています。
デザインには「相手」がいる
デザインするとき、最初に考えるのは、
- 誰が使うのか
- 何に困っているのか
- 何を伝えたいのか
- どうなれば成功なのか
ということです。
「自分が何を作りたいか」より、
「相手にとって何が必要なのか」
を先に考えます。
「きれいに作ること」が目的ではない
デザインというと、
- おしゃれにする
- かっこよくする
- きれいに整える
というイメージを持たれることがあります。
もちろん、美しさも大切です。
でも、それ自体が最終目的ではありません。
見た目は、目的を達成するための手段
Webサイトなら、
- 必要な情報を見つけられる
- 内容を理解できる
- 迷わず操作できる
- 次の行動に進める
ことが重要です。
そのために、色や文字、余白、写真、レイアウトがあります。
見た目は目的ではなく、目的を達成するための手段です。
「知らない人の顔は描けない」
前回の記事で、
「知らない人の顔は描けない」
という、私が大切にしている言葉について書きました。
今回の話も、そこにつながっています。
- 相手が何を知りたいのか。
- 何に困っているのか。
- どんな状況で使うのか。
それを知らなければ、何が良いデザインなのかも判断できません。
だからデザインでは、作る前に知ることが必要になります。
「虹色のタコ」の頭も同じ
この連載では、色彩、構成、視覚生理、タイポグラフィ、情報設計などを、タコの8本の足に例えてきました。
でも、その前に必要なのが、
「なぜデザインするのか」
を考えることです。
タコの頭で考えること
- 誰のためなのか
- 何を解決するのか
- どうなれば成功なのか
目的が決まって初めて、8本の足をどう使うのかが決まります。
AIは「それっぽいもの」を作れる
今はAIに、
- 「高級感のあるWebサイトを作って」
- 「もっと洗練されたデザインにして」
と伝えるだけでも、かなり見栄えのするものが出てきます。
これは、とても便利です。
ただ、
見栄えのいいものが作れることと、良いデザインができることは同じではありません。
AIが作ったあとにも判断は残る
たとえば、
- この情報は本当に必要か
- この順番で伝わるか
- 読みやすいか
- 操作に迷わないか
- そもそも誰のためなのか
こうした判断は、まだ必要です。
AI時代は「作る力」より「判断する力」
AIが多くの案を出してくれるようになるほど、
「何を作れるか」より、「何を良しとするか」
が重要になります。
- 10案出てきても、どれを選ぶのか。
- 何を直すのか。
- なぜ直すのか。
その判断には、デザインを見るための**「ものさし」**が必要です。
その「ものさし」をAIと共有する
そこで今、私は「デザインハーネス」というものを考えています。
「虹色のタコになれ!」で整理してきた考え方を、AIと一緒に使える形にするものです。
「いい感じ」ではなく、判断基準を渡す
たとえば、
- 目的
- ユーザー
- 情報設計
- 読みやすさ
- 操作性
- アクセシビリティ
といった視点をAIと共有する。
AIをデザイナーの代わりにするのではなく、
AIと一緒に、より良い判断をするための仕組み
にしたいと考えています。
デザインハーネスは配布する予定です
現在、実際に使える形へ少しずつ整理しています。
完成した段階で、この「虹色のタコになれ!」を通じて、AIで実際に使えるデザインハーネスを配布したいと考えています。
対象はデザイナーだけではありません。
- デザインを依頼する人
- Webサイトを担当する人
- 資料を作る人
- AIでものづくりをする人
そんな方にも使えるものを目指しています。
まだ少し先になりますが、形になったらこの連載で紹介します。
デザインは「表現すること」より「届けること」
アートとデザインの境界を、一本の線で完全に分けることはできません。
それでも、私が仕事としてデザインするときに大切にしていることは変わりません。
- 誰に届けるのか。
- 何を伝えるのか。
- 何を解決するのか。
そこから考える。
そして、その目的に合わせて色や文字、写真、レイアウトを選ぶ。
AIがどれだけ進化しても、
「なぜ作るのか」を考えることは、これからもデザインの中心にある。
私はそう考えています。



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