AI時代のデザイナーマネジメントとは?「自分がやったほうが早い」を手放す組織づくり|虹色のタコになれ!第15回【マネジメント】

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AI時代のデザイナーマネジメントとは?「自分がやったほうが早い」を手放す組織づくり|虹色のタコになれ!第15回【マネジメント】

「自分でやったほうが早い」

デザイナーとして経験を積んできた人なら、一度くらいそう思ったことがあるのではないでしょうか。

私自身、ずっとそうでした。

これまで私は、3社ほどでゼロからデザイン組織を立ち上げてきました。

最初の頃の私は、いわば「自分が主役」のマネージャーでした。

難しい案件、大きなプロジェクト、経営に近い仕事は自分が担当する。

メンバーには、比較的進めやすい案件を任せる。

  • 自分が担当すれば早い。
  • 品質もある程度コントロールできる。
  • プロジェクトや経営陣からも評価される。

当時は、それが正しいと思っていました。

でも、ある時気づきました。

それでは、組織になっていないのです。

「自分ができる」は、組織の強さではない

自分に仕事が集まるようになると、当然ですが限界がきます。

  • 確認待ち。
  • 判断待ち。
  • デザインレビュー待ち。
  • 難しい案件は全部自分。

結果として、自分自身がボトルネックになります。

私が忙しくなればなるほど、チーム全体の仕事が止まっていく。

個人として評価されていたとしても、組織として見れば、それは決して健全な状態ではありませんでした。

そこで、直近でデザイン組織を立ち上げたとき、考え方を大きく変えました。

自分を主役にするのをやめよう。

そう考えました。

主役を、マネージャーからメンバーへ

新しい組織では、できるだけ私自身が表に立たないようにしました。

  • プロジェクトで説明するのもメンバー。
  • ミーティングで質問するのもメンバー。
  • デザインを提案するのもメンバー。
  • プレゼンするのもメンバーです。

私は、そのための裏方に回りました。

ただし、何もしないわけではありません。

むしろ、マネージャーとしてやることは増えました。

会社の中には、デザインだけでは解決できないことがたくさんあります。

  • 部署間の調整。
  • 優先順位。
  • スケジュール。
  • 予算。
  • 根回し。

時には、組織同士の政治的な問題もあります。

そうした部分を、できるだけ私が引き受けました。

メンバーには、

「社内政治ではなく、デザインで悩んでほしい」

と思っていたからです。

答えを教えるのではなく、考えるためのフィードバックをする

もう一つ、大きく変えたことがあります。

それまでの私は、

  • 「ここを直したほうがいい」
  • 「こっちのほうがいい」

と、答えを出すことが多かったと思います。

でも、それもやめました。

代わりに、

  • 「なぜこのデザインにしたのか」
  • 「誰のためのものなのか」
  • 「今回、何を改善したいのか」
  • 「これが成功したと言えるのは、どんな状態なのか」

といった質問をするようになりました。

制作物だけを見るのではなく、その前にある判断を見る。

デザインレビューも、正解を教える場ではなく、一緒に判断基準を確認する場に変えていきました。

「何をつくるか」より「なぜつくるのか」

チームの仕事の進め方そのものも変えました。

  • 「このページを作ってください」
  • 「このバナーを作ってください」

という依頼を、そのまま制作に回さない。

制作前に、

  • なぜ必要なのか
  • 何を改善したいのか
  • 誰のためなのか
  • 何をもって成功とするのか

を確認する。

そしてデザイナー自身が、

理解する → 質問する → 提案する → 制作する

という流れで案件に関わるようにしました。

これは、私のポートフォリオでも「デザインチームと組織づくり」として整理している考え方です。

依頼されたものを作るチームではなく、

目的を共有し、一緒に考えるチームにする。

それを目指しました。

人を管理するのではなく、仕事を見えるようにする

一方で、主体性だけを求めてもチームは回りません。

「自主的にやってください」

だけでは、マネジメントを放棄しているのと同じです。

そこで、依頼や工数、進捗をできるだけ可視化しました。

各部署からの依頼を一元化し、事業へのインパクトをもとに優先順位を決める。

  • 誰が何を担当しているのか。
  • どの案件にどれだけ時間がかかっているのか。
  • どこに仕事が集中しているのか。
  • 現在どの案件が進んでいるのか。

それらをチームと事業部の双方から見える状態にしました。

ここで大切にしていたのは、

人を監視するためではなく、仕事の状態を見えるようにすること。

です。

「この人は仕事が遅い」

ではなく、

「なぜこの案件に時間がかかっているのだろう」

と考える。

個人を管理するのではなく、問題を発見しやすい状態をつくる。

これもマネジメントの役割だと思っています。

メンバーが評価されることが、マネージャーの成果

しばらくすると、変化が出てきました。

私がいなくても、メンバー自身が依頼者に質問するようになりました。

言われたものをそのまま作るのではなく、

「今回の目的は何ですか?」

「それなら、こちらの方法のほうが良いのではないでしょうか」

と提案する。

自分で考え、自分で説明し、自分でプロジェクトを進めるようになりました。

そして、それぞれのメンバーが社内で評価されるようになりました。

デザイン組織は、最初は私一人でしたが、最終的には約10名の組織になりました。

デザイン経験のない新卒社員も、実際の案件を担当できるデザイナーへ成長しました。

その後、人事から新卒社員の研修を任されるようになり、毎年のように新卒社員を半年から1年ほど受け入れるようになりました。

この経験から、私はようやく理解しました。

自分が評価されることではなく、メンバーが評価される状態をつくること。

それも、マネージャーの成果なのだと思います。

若い人に「教えてあげる」という感覚も、少し違う

私は、若い人を一方的に「育ててあげる」という考え方も、あまり好きではありません。

経験ではこちらのほうが上かもしれません。

でも、若い人には若い人の強さがあります。

  • 新しいものを吸収する速度。
  • 学習に対する抵抗の少なさ。
  • 体力。
  • 新しいサービスや文化への感覚。

こちらが教えることもあれば、こちらが教えてもらうこともあります。

経験年数が長いというだけで、指示を出し、完成したものを評価するだけになってしまったら、マネージャー自身が成長を止めてしまいます。

マネジメントは上下関係ではなく、

それぞれ違う能力を持った人たちが、力を発揮できる状態をつくること。

私はそう考えています。

そして、AI時代になる

ここからが、今回一番書きたかったことです。

生成AIによって、デザイナーの仕事はこれから大きく変わります。

  • アイデアを出す。
  • 文章を書く。
  • 情報を整理する。
  • ワイヤーフレームを考える。
  • 複数のデザイン案をつくる。

これまで時間がかかっていた作業を、AIが支援できる場面は確実に増えていきます。

すると、

「自分のほうが制作が速いから、自分がやる」

というマネージャーの価値は、以前より小さくなるかもしれません。

AIを使えば、若いデザイナーでも短時間で多くの案を出せます。

知らないことを調べることもできます。

壁打ちもできます。

文章も整理できます。

だからこそ、これからマネージャーに求められるのは、

「正解を持っている人」

ではないのだと思います。

AIが答えを出せる時代ほど、「判断基準」が必要になる

AIは、たくさんの案を出してくれます。

しかし、

  • 「どの案を選ぶのか」
  • 「そもそも何を解決するのか」
  • 「誰のためのデザインなのか」
  • 「事業として何を優先するのか」
  • 「なぜこのデザインなのか」

まで、自動的に決めてくれるわけではありません。

むしろ、選択肢が増えるほど、人間側の判断が重要になります。

だから、AI時代のデザイナーマネジメントでは、

答えを教えることより、判断できる人を増やすこと。

が大切になるのではないでしょうか。

AIに仕事を奪われない人を育てるのではなく

「AIに仕事を奪われないデザイナーを育てる」

という言い方をすることがあります。

私は、少し違うと思っています。

AIと競争する必要はありません。

AIを使いながら、

  • 目的を理解する。
  • 質問する。
  • 考える。
  • 選ぶ。
  • 説明する。
  • 提案する。
  • 改善する。

そうしたことができるデザイナーを増やせばいい。

そして、そのための環境をつくることが、マネージャーの役割なのだと思います。

AIの使い方を細かく管理することよりも、

AIを使って何を実現するのかを考えられるチームをつくる。

そのほうが、ずっと重要です。

「自分がいなくても回る」は、寂しいことではない

以前の私は、

自分がいなければ進まない。

自分が一番難しい仕事をしている。

そんな状態に、どこか価値を感じていたのかもしれません。

でも今は逆です。

  • 自分がいなくても、メンバーが考え、判断し、仕事を進められる。
  • 困ったときだけ相談に来る。
  • そして、私が思いつかなかったような提案をしてくる。

そのほうが、はるかに強い組織です。

マネージャーが主役である必要はありません。

主役はメンバーでいい。

マネージャーは、その人たちが思い切り活躍できる舞台をつくればいい。

虹色のタコになれ

この連載では何度も、

「自分が好きだから」

ではなく、

「目的と根拠で判断する」

という話を書いてきました。

それは、マネジメントでも同じなのだと思います。

自分の成功体験を押しつけない。

自分と同じデザイナーをつくらない。

人によって得意なことも違います。

経験も違います。

考え方も違います。

そして、AIによって働き方そのものも変わっていきます。

だからマネージャー自身も、形を変えなければならない。

自分が一番上手につくる必要はありません。

メンバーが考え、判断し、活躍できる状態をつくる。

AI時代だからこそ、それがデザイナーマネジメントの大切な仕事になっていくのではないでしょうか。

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