一般の人に色の3原色は? と尋ねるとそれぞれ違う答えが出るかもしれません。赤、青、黄色? 赤、緑、青? CMY? こう別れるのは、色材と色光という概念が混ざっているからです。色の3原色ではなく、色材の3原色、色光の3原色と概念を分けなければなりません。
デザイナーであれば、色材の3原色、色光の3原色は知っていると思います。色彩学の基本です。ググればすぐにでてくるので、一般の方にもすぐに調べることができます。しかし、デザイナーは、さらにこの知識に詳しくなくてはなりません。色材と色光とはなにか。なぜその3つの色なのか。なぜなら、基礎知識を誰よりも習得してなければ、実践に活かしたり、応用することはできないからです。このことは、どの職種も一緒です。型を知らなければ型破りはできない。
一般程度の知識のみを覚えただけではプロの仕事はできないということです。
つまり、デザイナーにとって大切なのは、色を選ぶ“勘”ではなく、“知識”です。
色彩の知識を目的に合わせて選択し、戦略的に配色することが色彩設計だと考えます。つまり、なぜこの色が適切なのか、理由を明確に説明できるのがデザイナーであり、それが色彩設計の基本です。
これからデザイナーを目指す人、もう一度深掘りしたい人向けに、また一般の方にも興味を持つ内容で色について話します。ここからさらに深掘りし、書籍などで専門性を深めてもらえれば幸いです。
色は光である
サー・アイザックニュートンの研究により、「色は光である」ということがわかっています。光は電磁波の一種で、人は光に含まれる色をみることができます。
光自体には色彩がありません。色彩は人間の目と脳のなかで生じます。目に見えるものは一部の波長(周波数)に過ぎず、見える色は波長(周波数)ごとに変化します。
太陽光線の白色の光をプリズムにを使って虹色に分散する実験は学校でもやったと思います。この虹色が人間の目と脳で生じる(見える)色というわけです。
レッド、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー、ヴァイオレット。ヴァイオレットというと、日本では、紫と略します。じゃ、パープルは? 一般的にヴァイオレットは青紫で、パープルは赤紫のことを指します。
赤はなぜ赤に見える?
赤いリンゴが赤に見えるのは、この虹色の光に含まれている赤以外の他の色を全部吸収し、赤だけを表面に反射するから赤に見えるのです。リンゴ自体は色を持っておらず、光が色を生じます。
同じように緑色に見えるものは、光に含まれている緑以外の他の色を吸収し、緑だけを表面に反射するから緑に見えます。
光がなければ色は識別できません。暗闇で色が見えないのは光がないからです。
減色法(減色混法)と加色法(加色混法)
なんだか急に難しい話しになってきたとお思いでしょうが、色の混合についてです。
まず、光に含まれる色を色光、それが反射して見える色を色材といいます。発光体が色光、光が反射して見えるのが色材という感じです。
パソコンのモニターやTVなどはそれ自体が発行しているので色光、絵の具やインクは光の反射によって見えるので色材です。
減色法(減色混法)
赤と緑のセロファン紙を重ねて白熱光の前にかざすと、2色は黒に近い濁った色(暗色)になります。白熱光に含まれる色のうち、赤いセロファンは赤以外を吸収し赤を反射するから赤色、緑は緑以外の色を吸収するから緑色。それを重ねるということは、赤が緑も吸収しており、緑は赤も吸収している。つまり、反射する色がなくなってしまったので、黒に近い濁った色(暗色)になるというわけです。
物体の色の混色はこの吸収から生じる色です。この混合は、減色の法則に支配されます。これを減色法といいいます。
この法則からインクによる印刷物は成り立っています。色材の3原色は、黄色(Yellow)、赤紫色(Magenta)、空色(Cyan)です。
この3原色は色材として混ぜ合わせて作ることが不可能で、この3つの色を減色法(減色混法)によって混ぜ合わせることで、ほぼすべての色を再現できます。
- 黄色(Yellow)は、緑と赤の反射で黄色になります。
(緑と赤以外の色は吸収され、緑と赤の光が反射。緑と赤の光が反射するということは、加色法で黄色になります。) - 赤紫(Magenta)は、赤と青の反射で赤紫になります。
(赤と青以外の色は吸収され、赤と青の光が反射。赤と青の光が反射するということは、加色法で赤紫色になります。) - 空色(Cyan)は、青と緑の反射で空色になります。
(青と緑以外の色は吸収され、青と緑の光が反射。青と緑の光が反射するということは、加色法で空色になります。)
- 赤(red)=黄色(Yellow)+赤紫色(Magenta)
- 緑(green)=黄色(Yellow)+空色(Cyan)
- 青(blue)=赤紫色(Magenta)+空色(Cyan)
となっています。
減色法で言葉で説明すると
- 黄色(Yellow)と赤紫色(Magenta)を混ぜ合わせると緑色と青色が吸収され、赤色のみが反射するから赤色。
- 黄色(Yellow)と空色(Cyan)を混ぜ合わせると赤色と青色が吸収され、緑色が反射するから緑色。
- 赤紫色(Magenta)と空色(Cyan)を混ぜ合わせると赤色と緑色が吸収され、青色のみが反射するから青色。
そして、黄色(Yellow)、赤紫色(Magenta)、空色(Cyan)を全部混ぜ合わせると、赤色、青色、緑色が吸収されてしまうので、色彩は残らず、黒になります。
加色法(加色混法)
一方、色光の3原色は赤、緑、青です。
なぜ、赤、緑、青なのか。
冒頭にも述べたように光自体には色がありません。人間の目の網膜にある視細胞の錐体細胞の仕組みが色の波長を区別しているからだと言われています。
その錐体細胞が赤、緑、青の波長に反応しており、黄色は赤と緑の波長を組み合わせて、脳内で置き換えて黄色としています。なぜ、赤、緑、青の波長を区別し反応するかはっきりとはわかっておりませんが、色光は、この3つの色を混ぜ合わせることでほぼ全ての色が表現できます。
- 空色(Cyan)=緑色(green)と青色(blue)
- 赤紫色(Magenta)=青色(blue)+赤色(red)
- 黄色(Yellow)=赤色(red)+緑色(green)
加色法は、たとえば、懐中電灯を3つ用意し、それぞれに赤、緑、青のセロファン紙を被せ、白い壁に投影して混ぜ合わせるイメージです。色の吸収という色材の減色法ではなく、光の色の足し算という感じです。
まとめ
覚え方としては、色材は減色法(減色混法)、色光は、加色法(加色混法)と覚えておくとよいと考えます。また、デザイナーなら、減色法とはなにか、加色法とはなにかというところまで追求し、上記のようなことが語れる状態だと良いです。身につけるということは、他人に対してアウトプットできる状態だと考えます。
他にも色相、彩度、明度も理解しなければなりませんし、色相環についての知識も必要です。補色の知識もとても大事です。
色相はこれ、彩度はこれ、明度はこれ、だけではなく、色相と彩度と明度の関係、経緯などを深掘りすることにより、実践に活かせ、応用ができるのだと考えています。
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