よく、
「デザインを勉強したいのですが、おすすめの本はありますか?」
と聞かれることがあります。
デザインに関する本は、本当にたくさんあります。
- PhotoshopやIllustrator、Figmaなどの使い方を解説した本
- 配色やレイアウトのテクニックをまとめた本
- 優れたWebサイトや広告を集めたデザイン集
- UI・UXの事例を紹介した本
どれも役に立つと思います。
私自身も、デザイン集を見ることはあります。
ただ、
「デザインそのものを学びたい」
という人に何か一冊おすすめするとしたら、私は少し違う本を紹介します。
なぜなら、デザインで本当に必要なのは、
「どう作るか」よりも、「なぜそうするのか」を考える力
だと思っているからです。
今回は、「虹色のタコになれ!」番外編として、私のデザインの考え方にも大きな影響を与えた2冊を紹介します。
「かっこいいデザイン」をたくさん見れば、デザインは上手くなるのか?
デザイン集を眺めていると、
- 「かっこいい」
- 「おしゃれ」
- 「こんなサイトを作ってみたい」
と思うことがあります。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
さまざまな表現を見ることで、アイデアの引き出しは増えます。
ただ私は、それだけではデザインを学んだことにはならないと思っています。
AppleのWebサイトを真似しても、Appleにはならない
たとえばAppleのWebサイトを見て、
「かっこいいから、この感じを真似してみよう」
と思ったとします。
- 大きな写真を使う。
- 文字を大きくする。
- 余白をたくさん取る。
- スクロールに合わせて動きをつける。
そうすれば、見た目は少しAppleっぽくなるかもしれません。
でも、それ以上にはなかなかなりません。
なぜなら、
なぜAppleがそのデザインを採用しているのか
を理解していないからです。
Appleと自分が作っているサービスでは、
- 商品が違う
- ユーザーが違う
- ブランドが違う
- 情報量が違う
- ユーザーにしてほしい行動が違う
- サービスの目的が違う
当然、条件が違います。
条件が違えば、最適なデザインも違います。
見た目だけを持ってきても、そのデザインが生まれた理由までは持ってこられません。
「かっこいい」は、デザインの目的ではない
少し強い言い方をすると、
「かっこいい」は趣味です。
- 「かわいい」
- 「スタイリッシュ」
- 「高級感がある」
- 「私はこの色が好き」
こうした感覚そのものを否定するつもりはありません。
デザインには表現も必要ですし、美しさも大切です。
ただし、仕事としてデザインをするとき、
「自分が好きだから」だけでは判断できません。
デザインで考えるのは「誰に、何を、どう伝えるか」
私がデザインするときに考えているのは、たとえば次のようなことです。
- 誰が使うのか
- その人は何に困っているのか
- 何を伝えたいのか
- 何を最初に見せるのか
- どの順番なら理解しやすいのか
- 最終的に何をしてほしいのか
- どうなれば成功なのか
色や文字や写真や余白を決めるのは、そのあとです。
つまり、
見た目を作る前に、すでにデザインは始まっています。
良いUIは「デザインを意識させない」
私は、WebサイトやUIを見たとき、
「このサイト、かっこいい!」
と思うことよりも、
何も考えずに使えること
のほうが大切だと思っています。
どこを押せばいいのか迷わない。
説明を何度も読み返さなくていい。
欲しい情報がすぐに見つかる。
自然に選択できる。
そして、次の行動へ進める。
ユーザーがデザインそのものを意識しなくても使える。
それこそが、UI・UXデザインの重要な役割だと考えています。
デザインは主役ではない
デザインは、ユーザーに
「すごいデザインですね」
と言わせるためだけに存在するものではありません。
商品を理解してもらう。
- サービスを利用してもらう。
- 必要な情報を見つけてもらう。
- 迷わず行動してもらう。
- そのための手段です。
だから私は、
「完成された見た目」を集めた本より、「なぜそうするのか」を考えられる本
をおすすめしたいのです。
おすすめの1冊目『美の構成学―バウハウスからフラクタルまで』
最初に紹介したいのが、三井秀樹さんの
です。
最新のWebデザインが載っている本ではありません。
Figmaの使い方も載っていません。
そのまま使えるUIパーツもありません。
それでも、私はデザインに携わる方に一度読んでほしいと思っています。
「なぜ美しく見えるのか」を考える
この本を読む面白さは、
美しさを「感覚」だけで終わらせずに考えられること
です。
- なぜ、まとまって見えるのか。
- なぜ、バランスよく見えるのか。
- なぜ、この形は心地よく感じるのか。
構成や比率、形、秩序などについて知ることで、
これまで
「なんとなくいい」
と思っていたものを、別の角度から見ることができます。
「センスがいいですね」で終わらせない
私は昔から、
「センスがいいですね」
という言葉に少し違和感がありました。
もちろん、褒めていただけるのは嬉しいです。
ただ、
「センスだから」
で終わってしまうと、再現することができません。
それよりも、
- 「なぜ、このレイアウトなのか」
- 「なぜ、この余白なのか」
- 「なぜ、ここを大きくするのか」
を説明できるほうが重要だと思っています。
これは「虹色のタコになれ!」で紹介した、
第2の足「構成」
にもつながる考え方です。
デザインを「感覚」から「考え方」へ移してくれる本として、おすすめしたい一冊です。
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おすすめの2冊目『改訂新版 書く技術・伝える技術』
もう一冊は、少し意外かもしれません。
倉島保美さんの
です。
タイトルの通り、文章について書かれた本です。
「デザインのおすすめ本なのに、文章の本?」
と思われるかもしれません。
でも私は、デザイナーにこそ読んでほしいと思っています。
デザインも文章も「伝えるためのもの」
Webサイトを作るとき、私たちは画面をきれいにしているだけではありません。
たくさんある情報の中から、
- 何を最初に伝えるのか
- どの順番で伝えるのか
- 何を見出しにするのか
- どこを詳しく説明するのか
- 何を削るのか
- どこで行動してもらうのか
を考えます。
これは、文章を書くときも同じです。
どちらも、
相手が理解しやすいように情報を整理する仕事
です。
Webデザインと文章には共通点が多い
たとえばランディングページを作るとき、
上から思いついた順番に情報を並べることはありません。
まず、
「このサービスは何なのか」
を伝える。
次に、
「自分に関係があるのか」
を理解してもらう。
そのあと、
- 「どんなメリットがあるのか」
- 「本当に信用できるのか」
- 「料金はいくらなのか」
といった疑問に答えていく。
最後に、
- 「問い合わせる」
- 「購入する」
- 「申し込む」
といった行動につなげる。
読み手の頭の中を想像する
大切なのは、
こちらが伝えたい順番ではなく、相手が理解しやすい順番
です。
これは文章を書くときも、UIを作るときも変わりません。
「虹色のタコになれ!」でいう、
第5の足「情報設計」
そのものです。
私は『書く技術・伝える技術』を、
文章を書くためだけの本ではなく、
「情報をどう整理すれば、人に伝わるのか」を考える本
として読んでいます。
デザイナーだけではなく、
- Webディレクター
- マーケター
- プロダクトマネージャー
- 編集者
- 企画職
- Web担当者
など、情報を人に伝える仕事をしている方にもおすすめです。
デザインの本なのに「デザイン本」ではない理由
今回紹介した2冊には、共通点があります。
どちらも、
「これを真似すれば完成します」
とは教えてくれません。
代わりに、
「なぜそう見えるのか」
「どうすれば伝わるのか」
を考えるきっかけを与えてくれます。
私は、そのほうが長く使えると思っています。
ツールや流行は変わる
私がWebデザインを始めた頃と今では、使うツールも大きく変わりました。
デザインの流行も変わりました。
Webサイトの作り方も変わりました。
そして今は、AIを使えば短時間で「それっぽいデザイン」を作ることもできます。
でも、
- 情報をどう整理するか
- 何を優先するか
- どうすれば理解しやすいか
- なぜ、このデザインにするのか
という部分は変わりません。
むしろAIの時代だからこそ、
「作る力」以上に「判断する力」が重要になる
と私は考えています。
デザイン集を見るときも「なぜ?」を考える
ここまで読むと、
「では、デザイン集を見る意味はないのか?」
- と思うかもしれません。
- そんなことはありません。
- 私もデザインを見るのは好きですし、参考にもします。
ただ、
「かっこいい」
だけで終わらせないようにしています。
「いいな」と思ったら分解してみる
気になるデザインを見つけたら、少しだけ考えてみます。
- なぜ、この文字サイズなのか
- なぜ、ここに余白があるのか
- なぜ、この色なのか
- なぜ、この写真なのか
- なぜ、この順番なのか
- なぜ、このボタンがここにあるのか
そうやって分解すると、
単なる「好きなデザイン」が、
自分の中の判断材料
に変わります。
真似するのではなく、理由を考える。
これだけでも、デザインの見方はかなり変わります。
「答え」を集めるより、「判断基準」を増やす
デザインには、毎回違う条件があります。
- ユーザーが違う。
- サービスが違う。
- 目的が違う。
- 課題が違う。
だから、
「このデザインが正解」
というものをたくさん覚えても、別の仕事でそのまま使えるとは限りません。
大切なのは、
目の前の条件から、自分で答えを考えられること
です。
そのために、
- 色彩を知る。
- 構成を知る。
- 視覚の仕組みを知る。
- タイポグラフィを知る。
- 情報設計を知る。
そして、
「なぜ、このデザインなのか」
を自分の言葉で説明できるようになる。
本から「完成形」ではなく「考え方」をもらう
今回紹介した2冊は、
「この通りに作れば、かっこいいデザインになります」
という本ではありません。
でも私は、それがいいと思っています。
本から完成された答えをもらうのではなく、
考えるための視点をもらう。
そして、自分が担当するユーザーやサービスに合わせて、その考え方を使う。
それは、
環境や目的に合わせて姿を変える、
という考え方にもつながります。
「おすすめのデザイン本はありますか?」
と聞かれたら。
私は、見た目の答えがたくさん載っている本より、
「なぜ?」を考えられるようになる本
をおすすめします。
デザインをこれから学ぶ方にも。
すでにデザインの仕事をしている方にも。
今回紹介した2冊が、デザインを見る目を少し変えるきっかけになれば嬉しいです。


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