第1回では、「虹色のタコ」という言葉に込めた意味について書きました。
タコの8本の足は、デザインを支える8つの考え方。
その第1の足が「色彩」です。
色は、デザインの中でも特に感覚で語られやすい要素です。
- 「赤の方が目立つ」
- 「青の方が好き」
- 「もっと明るくしたい」
- 「この色はなんとなく違う」
こうした言葉は、デザインの現場でよく出てきます。
もちろん、色に対する感覚は大切です。
美しいと感じること。違和感に気づくこと。印象の違いを感じ取ること。
それ自体は、デザイナーにとって必要な力です。
しかし、色を「好き嫌い」だけで決めてしまうと、デザインは目的から離れてしまいます。
色は、感覚だけで扱うものではありません。
色彩学であり、色彩心理であり、人の視覚に関わる科学的な要素でもあります。
だからこそ、色は学ばなければならない。
そして、目的と根拠を持って選ばなければならないものだと考えています。
色は、飾りではなく情報である
色は、画面や紙面をきれいに見せるためだけのものではありません。
色には役割があります。
- 情報を整理する。
- 重要度を伝える。
- 注意を促す。
- 安心感をつくる。
- 信頼感を与える。
- ブランドを記憶させる。
- 行動を促す。
つまり、色は飾りではなく情報です。
たとえば、Webサイトのボタンを考えるとき、単に「目立つから赤にする」とは限りません。
赤は注意を引きやすい色です。
しかし、サービスの内容や文脈によっては、強すぎたり、不安を与えたりすることもあります。
青は信頼感や冷静さを感じさせやすい色ですが、使い方によっては冷たく見えることもあります。
色そのものに、いつでも通用する絶対的な正解があるわけではありません。
正解は、目的によって変わります。
「目立つ色」ではなく「目的に合う色」を選ぶ
色を考えるとき、よく出てくる要望があります。
「もっと目立たせたい」
これはとてもよくある言葉です。
しかし、ここで考えるべきなのは、ただ目立てばよいのか、ということです。
何を目立たせたいのか。
誰に気づいてほしいのか。
どの行動につなげたいのか。
その色は、全体の中で本当に機能しているのか。
すべてを目立たせようとすると、結局何も目立たなくなります。
赤、黄色、太字、大きな文字、強い背景色。
全部を同時に使えば、画面はにぎやかになります。
しかし、ユーザーにとっては、何を見ればいいのかわからなくなることがあります。
目立つことと、伝わることは違います。
デザインで大切なのは、目立たせることそのものではありません。
必要な情報が、必要な順番で、必要な人に伝わることです。
そのために色を使う必要があります。
色は、言葉から決める
私は、色を決めるときに、自分の好みから入らないようにしています。
まず見るのは、依頼者の言葉です。
- 何を大切にしているのか。
- 誰に届けたいのか。
- どんな印象を持ってもらいたいのか。
- どんな未来を目指しているのか。
- 何を避けたいのか。
そうした言葉を拾い、整理し、色に変換していきます。
印象を言葉にする
たとえば、伝えたい印象が「安心感」なのか。
「革新性」なのか。
「親しみやすさ」なのか。
「高級感」なのか。
「スピード感」なのか。
そこが変われば、選ぶ色も変わります。
色は、デザイナーの気分で選ぶものではありません。
依頼者の言葉、サービスの目的、ユーザーの状況から導き出すものです。
だからこそ、後から説明できます。
「私はこの色が好きです」ではなく、
「この目的に対して、この色が適切だと考えました」と言える。
それが、デザインにおける色の選び方だと思っています。
配色は、1色ではなくルールで考える
色彩で大切なのは、単に「何色を使うか」だけではありません。
むしろ大切なのは、配色のルールです。
- メインカラーは何か。
- サブカラーは何か。
- アクセントカラーは何か。
- 背景色はどうするのか。
- 文字色は読みやすいか。
- 警告やエラーはどう表現するのか。
- リンクやボタンはどう見せるのか。
こうしたルールがないと、デザインは場面ごとにぶれていきます。
- ページが増えるほど統一感がなくなる。
- 担当者が変わると色の使い方が変わる。
- バナーごとに印象が違う。
- ボタンの色が毎回違う。
- 重要な情報と装飾の色が混ざってしまう。
これでは、ユーザーにとっても、運用する人にとってもわかりにくくなります。
配色ルールは、デザインの品質を保つための仕組みです。
色を自由に使うためには、まずルールが必要です。
ルールがあるからこそ、必要な場面で柔軟に変化できます。
色彩学は、感覚を否定するものではない
ここで誤解してほしくないのは、色彩学や理論は、感覚を否定するものではないということです。
感覚は大切です。
ただし、その感覚を「なんとなく」で終わらせないことが重要です。
- なぜ明るく感じるのか。
- なぜ重く感じるのか。
- なぜ安心して見えるのか。
- なぜ読みにくく感じるのか。
- なぜ目立って見えるのか。
その理由を考えるために、色彩学があります。
色は学ぶべきもの
- 色相
- 明度
- 彩度
- 補色
- 類似色
- トーン
- コントラスト
- 色彩心理
- 視認性
- 可読性
こうした知識は、デザインを難しくするためのものではありません。
感覚を言葉にし、判断に根拠を持たせるためのものです。
「なんとなく良い」ではなく、
「なぜ良いのか」を考える。
「なんとなく違う」ではなく、
「何が目的に合っていないのか」を考える。
そのために、色彩学は必要です。
色はセンスだけで扱えるものではありません。
人の印象、認知、視覚、行動に関わるものです。
だから、学ばなければならない。
そして、学んだうえで目的に合わせて使い分ける必要があります。
色は、人によって見え方が違う
色を考えるときに、もうひとつ忘れてはいけないことがあります。
それは、色の見え方は人によって違うということです。
- 画面の明るさ
- 見る環境
- 年齢
- 視力
- 色の感じ方
- ディスプレイや印刷の違い
同じ色を使っていても、すべての人に同じように見えているとは限りません。
だから、色だけに意味を頼りすぎてはいけません。
たとえば、エラーを赤だけで示す。
重要な情報を色の違いだけで伝える。
リンクかどうかを色だけで判断させる。
これでは、伝わらない人が出てくる可能性があります。
色は強い表現手段です。
しかし、色だけに頼るのではなく、文字、形、配置、余白、アイコンなどと組み合わせて伝える必要があります。
ここで、色彩はアクセシビリティともつながります。
デザインの8本の足は、それぞれ独立しているようで、実際には深く関係しています。
色を選ぶ前に考えること
色を選ぶ前に、まず考えるべきことがあります。
- 誰に届けるのか。
- 何を伝えるのか。
- どんな感情を持ってほしいのか。
- どんな行動につなげたいのか。
- どの情報を優先して見せたいのか。
- 長く運用できる配色ルールになっているか。
- 見やすさ、読みやすさは保たれているか。
これらを考えずに色を選ぶと、配色は単なる好みの勝負になります。
「私はこの色が好き」
「私はこっちの方が良いと思う」
そうなると、議論は平行線になりやすい。
しかし、目的が明確であれば、色の判断は変わります。
このユーザーに安心感を与えるため。
このボタンを次の行動として認識してもらうため。
このブランドの信頼感を崩さないため。
この情報の優先順位を伝えるため。
目的があるから、色に根拠が生まれます。
第1の足としての色彩
色彩は、デザインの入口に見えやすい要素です。
見た瞬間に印象を左右するため、良くも悪くも注目されます。
だからこそ、好き嫌いで判断されやすい。
しかし本来、色は論理的に扱うべきものです。
色は、情報であり、感情であり、導線であり、ブランドであり、ルールです。
きれいに見せるためだけではなく、伝えるために使う。
目立たせるためだけではなく、迷わせないために使う。
好みで選ぶのではなく、目的に合わせて選ぶ。
これが、私が考える「第1の足:色彩」です。
虹色のタコは、ただ派手なタコではありません。
さまざまな色を理解し、目的に合わせて使い分ける存在です。
自分の好きな色に固まらず、相手と状況に合わせて配色を変えられる存在です。
デザイナーも、そうあるべきだと思っています。
次回予告:第2の足「構成」
次回は、第2の足である「構成」について考えていきます。
色を選んだとしても、それをどこに、どの大きさで、どの順番で配置するかによって、伝わり方は大きく変わります。
デザインは、色だけでは完成しません。
次回は、情報をどう並べ、どう見せるかという「構成」について掘り下げていきます。





コメント